先日、仙台市で臨床歯科CADCAM学会に参加してきました。
簡単に言うと「歯科治療のデジタル化」に関する学会です。
●歯科治療のデジタル化について
当院でも一部の治療では、口腔内スキャナーというカメラでお口の中を撮影し、型取りをしていますが、それもデジタル化のひとつです。現にアメリカの半分近くの歯科大学では、従来の粘土のような材料を使った型取りは、大学教育では扱わなくなっています。
当院での口腔内スキャナーによる治療は、こちらをご確認ください
これまでの歯科治療は、粘土状の型取りをして、その型に石膏を流して作った模型の上で、手作業で被せ物などを作るのが一般的でした。
これを、
・粘土状の材料での型取り → 口腔内スキャナーで撮影
・石膏の模型を作製 → データ上で模型を作製
・手作業で被せ物を作製 → コンピュータ上で設計、機械が被せ物を作製
というように変わるのがデジタル化です。(かなりざっくり説明してます。矯正治療やインプラントにも応用されています)
●デジタル化にはどんなメリットがあるの?
・理論的には型取りの精度が向上する
型取りの材料や、石膏模型は固まるときに、必ず変形を起こします。
それがお口の中を直接撮影し、データ化することで材料の変形という誤差が理論上なくなるため、すでに従来の方法と同等、あるいはそれ以上という研究結果が支持されています。
・院内感染の予防
唾液が残存してる可能性のある型や模型を、歯科医院から歯科技工所へやり取りすることによって、感染症のリスクがあります。もちろんそうならないように注意を払っていますが、データのやり取りであれば、そのようなリスクはありませんよね(゜_゜>)
他にも医療廃棄物が減ったり、迅速に歯科技工所にメールなどで送信できたり、数多くのメリットがあります。
●デジタル化にはどういう課題があるの?
いいことづくめのように思いますが、課題もあります。
歯科治療には細かいエラーがつきものです。
土台となる歯の形を削って整える技術はもちろんですが、型取りの変形、模型の変形、詰め物を作る技工士さんとのやりとり、詰め物を接着するときの処理など、より長持ちする治療をするためには、乗り越えなければいけないハードルがたくさんあります。
デジタル化によって歯科治療が進化した部分が多くある一方で、それを使う歯科医師がその特性を理解していなければ、逆に精度の悪い修復物ができてしまうなど、難しい部分もある分野です。
歯科治療のデジタル化は、目まぐるしく進歩している最中のため、数年前まで常識だと思っていたことが研究の進歩で否定されることもあり、色々な先生の話を聞いて情報のアップデートが必要なんですね(..)
日本では健康保険という非常に優れた制度がありますが、保険治療は使う材料や形式が厳しく制限されており、その保険のルール内でのデジタル化は、まだほんの一部だけです。しかし、今後数年で適用が拡大していくことは間違いないと思っています。
また、この学会で大学時代の卓球部の後輩(麻美先生にとっては医局の先輩でもあります)が、被せ物の接着処理について講演していました。
セラミックや保険の白いプラスチックの冠(CADCAM冠)は、どれほど綺麗に作られたとしても、歯との接着がしっかりしていなければ失敗するため、実は見た目以上に難しい治療です。歯の修復の歴史は、接着の研究の歴史といってもいいくらい、どう材料を接着させるかは非常に重要なトピックスです。
ちょっと想像していただきたいのですが、お口の中は常に高温多湿な上に、歯は毎日最大150kg近くの力にさらされます。人工物を長持ちさせるには、とても過酷な環境ですよね…(・_・;)
どのような処理を、どのような手順で行えばよいかが改めて自分の中でも確認でき、とてもありがたい発表でした。
最近はコロナ禍の影響で、勉強会などもオンライン参加することが多かったのですが、久しぶりに直接顔も見られていい週末でした。
今回勉強してきたことを、また普段の診療に生かしたいと思います、ここまで読んでいただきありがとうございました(^^)/
(ささき歯科医院 歯科医師 佐々木俊)
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