こんにちは、ささき歯科医院の歯科医師 佐々木俊です。
「お子さんへのむし歯菌がうつるのを防ぐため、口移しや食器の共用を避ける」ってよく聞きませんか?
むし歯は、お口の中のむし歯菌が、糖を使って酸を作り、その酸で歯のミネラルが溶け出す現象ですので、むし歯菌が少ないに越したことはないですよね。
「うつる」といえば、水沢出身の吉田戦車さんの漫画「伝染るんです。」が昔から我が家にあるのですが、この話はまた今度にしますね。
今回は、
「むし歯菌って本当にうつるの?」
「実際どれくらいの影響があるの?」
「結局どうやってむし歯を予防したらいいの?」
という疑問について、ご説明しようと思います。
●「生まれたばかりの赤ちゃんのお口には、むし歯菌はいない」
むし歯菌は、歯があって初めてそこに定着できます。
家を建てられない場所に人間が定住できないのと同じですね。
歯が生えてきて初めて、むし歯菌が感染できる機会が生まれます。
●「むし歯菌が特に感染しやすい時期がある」
1才7か月~2才7か月の期間は、感染が特に起きやすいと言われています。
・奥歯が生えて、むし歯菌のすみかが増える
・砂糖を摂取する機会が増えやすい などが原因と考えられています。
むし歯予防の先進国であるスウェーデンでの研究に、「むし歯菌に感染するのが2才よりも前か後かで、4才になったときのむし歯の本数がおよそ16倍違う」というものがあります。
むし歯菌の感染は、遅ければ遅いほどいいんですね。
●「お母さんのむし歯(菌)が多いほど、感染のリスクは高まる」
これは色んな研究で支持されており、お子さんのお口の中の細菌の約半数はお母さんからもらったものと言われています。
妊娠中は、できる治療が制限されるので、妊娠を考え始めたときにむし歯治療や、クリーニングを受けておくことで、お口の中のむし歯菌を減らすことが可能です。
●「すでに口移しや食器の共有をしてしまった!」
ときどきこのような相談を受けますが、慌てなくて大丈夫です。
実は、
むし歯菌の感染が、そのままむし歯のリスクを高くするかというと、相関は明らかでないとする統計学的な研究もあり、最近ではそれほど過敏にならなくても大丈夫で、もっと気を付けたほうがいいことがいっぱいありますよという風に当院では説明しています。
(感染に気を付けられるなら、それに越したことはないですけどね)
むし歯菌が定住しにくい環境を作ってあげれば、むし歯のリスクはそう簡単には高くならないと言われています。
具体的には
・甘いものをできるだけ控える
むし歯菌は砂糖が大好物です。
・フッ素が入った歯みがきペーストやジェルを正しく使う
フッ素は、乳歯を強くしてむし歯から守ってくれたり、むし歯菌の活動を弱めます。
むし歯菌がお口に入ってきたとき、大好物の砂糖もいっぱいある、苦手なフッ素もやってこない環境だったら、どんどん仲間を増やして定住しちゃいますよね。
そうならないように周りの大人が配慮してあげれば、むし歯のリスクはしっかりコントロールできますので、かかりつけの歯科医院と一緒に頑張りましょう。
まとめると、
・むし歯菌は、唾液などを介して周囲の人から感染する
・むし歯菌に感染するのが早いほど、むし歯のリスクは高い傾向にある
・お母さんや周りの大人が、口の中をきれいに保つことで、感染のリスクは減らせる
・甘いもののコントロールやフッ素の使用など、むし歯を防ぐ上でもっと大事なことがあるので、むし歯菌の感染だけにとらわれなくて大丈夫
今回は以上です。
正しいむし歯予防の知識があれば、お子さんをむし歯から守ることができるので、分からないことがありましたらなんでもお尋ねください。
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