今日は前回ご紹介した「矯正的挺出」という治療について、実際の症例を交えて解説していきます。
(過去ブログ:「重度のむし歯を残す、矯正的挺出とは①」)
重度のむし歯とは、むし歯が深くまで進んでいて、材料の接着などが難しい状態を指すことが多いのですが、その歯をゴムの力を使って引っ張り上げて、保存を試みる処置を矯正的挺出と呼びます。
(イラスト:矯正的挺出のイメージ図)
▷実際の症例です。
前歯が重度のむし歯で折れ、レントゲンを見ると歯の根は残っているものの、ほとんど歯ぐきに埋もれて見えない状態でした。
この状態では土台を立てて被せることは困難です(仮に土台を立てられたとしても、短期間のうちに折れ、抜歯になると思われます)
また、この歯が抜歯になり、失ったところをブリッジで補おうとした場合、隣の健康な歯を削って連結することになり、患者さんが被るデメリットは大きくなってしまいます。
ブリッジの治療のデメリットは、両隣を削ることと一本あたりの噛む力の負担が増えることで、様々なトラブルにつながることです。
また、被せて連結することで、歯周病の進行やむし歯の再発が起きてきても、そのトラブルが外から分かりにくくなり、対応が遅れてしまうこともしばしばあります。
歯の欠損を補う治療は、おのおのメリットデメリットが存在します。
そちらについては、こちらのページを読んでみてください(゜_゜>)
そこで患者さんとも相談の上で、矯正的挺出により、両隣の歯に手をつけずに済むように、この歯の保存を試みることになりました。
写真は、歯を引っ張り上げる装置を付けたところです。
歯根にフックを接着し、ゴムの力でゆっくり引っ張り上げていきます。
事前にむし歯を全て除去し、根管治療(細菌感染を起こした歯根の治療)をしています。
引っ張り上げると、周りの歯ぐきも一緒についてきますので、この歯ぐきの高さを整える歯周外科処置を行います。
歯ぐきに埋もれていた歯が、ようやく見えてきました(^^)/
こうすることで、土台をしっかり接着することができ、冠を被せることができました。
治療は簡単ではないですが、すぐに抜歯してブリッジや入れ歯、あるいはインプラントを、将来に先送りできたメリットは非常に大きいです。
※医療広告ガイドラインに則り、治療費・治療回数の目安や治療によって起こりうるリスクを以下に記載します
矯正的挺出
自費診療・¥33,000-
治療回数の目安 5~10回
リスク:将来的にむし歯の再発や歯根破折を起こしてしまうリスクがあります
歯根の長さなどによっては、適用が難しい場合があります
これは歯の保存のための手段として有効な処置ですが、全ての歯科医院で行っている治療ではありません。
保存が難しいむし歯でお悩みの方は、ご相談くださいね(゜_゜>)
(書いた人:奥州市水沢 ささき歯科医院 歯科医師 佐々木俊)
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